ここ日本でも、最近では一歩間違えば、事件に巻き込まれ、命を落とすことさえある。
かつて、ヨーロッパで生活した10年の間に、身を守るためのいろんな経験をした。
そんな経験を下に、未来ある子供たちに伝えたい事がある。
ドイツに渡った1995年、俺は、ドイツからスペイン南部へ旅をした。
ドイツ語の語学学校で知り合った親友、フェルナンドに会いに行く為だ。
フェルナンドは、スペイン南部、アリカンテ近くの町に住んでいた。
彼の町へ着くと、フェルナンド、彼のファミリー、そして友人たちが温かく迎えてくれた。
毎晩、フェルナンドは、俺を飲みに連れて行ってくれて、色んなお店で、彼の友人たちに出会い、楽しく酒を飲んだ。
スペイン人は、ラテン系で、とても陽気だ。
明るく、人懐っこく、とても楽しい気質だ。
日々、彼らから最高のおもてなしを受けていた。
しかし、そんな楽しいおもてなしの前に、実はフェルナンドからスペインの町を歩く為の掟を教えられていた。
初日の晩、家で夕食を取っている時、フェルナンドに言われた。
『 飲みに行く時、ズボンのポケット4カ所に、小銭を分けておくように。
俺と一緒にいる時は、大丈夫だけど、飲み屋でトイレに入った時など、もし、takeoが一人でいて、誰かにナイフを出されて脅されたら、相手にズボンのポケットの小銭を渡せ!
そうすれば、それ以上何事も無く終わる事がほとんどだ 』
すると、一緒に食事をしていたフェルナンドの従兄弟が付け加えた。
『 俺たちといる時は、俺たちファミリーが守っているから大丈夫。
でも、一人になる時は、絶対に気をつけろ!』
フェルナンドの実家の町では、アジア人は、ほとんどいなかった。
だから、俺は、街の中で浮いていた。
フェルナンドと街へ出ると、周りから俺自身に視線が注がれているのを、いつも感じていた。
アジア人がいないこの町では、俺は、珍しい人間で、良くも悪くも目立つ存在だった。
そして、スペイン南部は、治安が悪いから、フェルナンドは、言った。
『 Takeoは、この町でスリのターゲットになりやすい 』
当時のスペイン南部は、失業者も多く経済的に貧しい人達が大勢いた。
だから、スリや強盗が多発。
特に、親がアルコール中毒者の子供たちは、その日食べるものを得る為にナイフを出し、人を脅し金をせびっていた。
子供が集めてきたお金を、親が取り上げ、親は、その金でアルコールを買う。
親にお金を取られた子供は、また自分の為に金集めをする。
日本から来た俺には、理解出来なかったが、それが当時のスペイン南部の現実だった。
悲しいかな、子供にも気をつけろ!と言われてしまう現実を目の当たりにした。
子供でも、食べる為には必死だ。
俺は、平和な日本で育った。
防犯の為に、ズボンのポケットに小銭を分けたことなど無かった。
しかし、フェルナンドから、自分の身を守る手段を学んだ。
ポケットに分けたお金は数百円程度。
その数百円を渡すだけで、身の危険を回避できるとフェルナンドは言った。
今、日本も、ニュースで凶悪な事件を目にする事が多い。
平和な日本のはずだが、いつ、どこで事件に巻き込まれるかは分からない。
だからこそ、子供達に自分の身を自分で守る事を伝えていかなければならない。